4月28日、与党の共謀罪採決の動きが激しさをますなかで、民主党修正案が国会に提出されました。
私達は、この間民主党が共謀罪の採決を急ぐ与党に対して共謀罪の慎重な審議を求め、国会で共謀罪の危険性、問題点を鋭く追及してきたことを高く評価しています。民主党の努力なしに、国会で共謀罪の問題点がここまで明らかにされることはなかったでしょう。
しかし、民主党が修正案という形で共謀罪の審議に臨むことに対して強い危惧を感じています。
与党の強行採決の切迫というなかで、対案をださざるをえなかったという側面があることは疑いありませんが、共謀罪は憲法、刑法体系の根幹にかかわる問題だけに原則をふみはずすことのない対応が何よりも求められます。従って、非常に困難な局面であっても、廃案という立場をくずすべきではないと考えます。
第一に、与党修正案では共謀罪の対象団体が市民団体などに適用されかねないと、対象を組織的犯罪集団に限定しようとするものですが、これで市民団体などへの適用はないとはとても思われません。
民主党修正案では、組織的犯罪集団を「団体のうち、死刑若しくは無期若しくは長期五年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪又は別表第一第二号から第五号までに掲げる罪を実行することを主たる目的又は活動とする団体をいう」としています。確かに与党の「その共同の目的がこれらの罪(長期4年以上の刑のこと)又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体に係るものに限る」という規定からすれば、民主党の共謀罪修正案は、一歩進んだ規定になっています。
しかし、組織的犯罪集団が自ら違法な行為を「主たる目的又は活動とする団体」
と公言するはずはなく、その判断は捜査当局に委ねられることになるからです。
捜査当局の恣意的判断で市民団体、労働団体などが組織的犯罪集団にされかねません。
民主党修正案は、組織的犯罪集団による「国際的な犯罪」に共謀罪は限定するとし、二重のチェックがかかるとしています。しかし、多くのNGOや労働団体などが国際的な交流や連携を深めているなかで、民主党案では、むしろこうした国際的に活動している団体が主要な共謀罪の対象となることは十分考えられます。
これでは人権・人道問題で政府とは異なる立場で活動する団体の自由はまったく保障されません。
第二に、共謀罪は話し合うことが罪になる、思想を処罰するのでははないかという危惧に対して、犯罪の「合意」だけでは処罰されないために予備行為を要件とするとしていますが、たとえ予備行為を要件としたとしても共謀罪が思想を処罰するものであることにかわりはありません。
予備行為とは犯罪の準備行為のことです。例えば殺人のために包丁を買うとか、下見をするとかが殺人の予備行為とされています。しかし、例え、殺人の「合意」があり、そのために包丁を買ったとしても、犯罪が実際におこなわれたわけではありません。実行の着手がない以上、そは「合意」を処罰するものであり、思想の処罰と表裏一体の関係にあります。
日本の刑法は犯罪の実現である既遂の処罰を原則とし、例外的に未遂犯を、ごく例外的に予備行為を、更に例外的に陰謀を処罰しています。刑法で予備行為が処罰されるのは殺人、強盗、放火などの重大な犯罪に限られています。
ここに、共謀罪成立の要件として、予備行為を加えるならば、日本の法体系では共謀より予備行為の罪が重いにもかかわらず、なぜ共謀が処罰され、予備行為は処罰されないのかという重大な問題がおこることになります。共謀罪成立の要件として予備行為を加えることは日本の刑法体系に混乱をもたらすもの以外のなにものであもありません。
以上、私たちは、この間の民主党の共謀罪審議に対する取り組みについて高く評価するものですが、民主党修正案では共謀罪の危険性、問題点は解消されないと考えています。
共謀罪という話し合うことが罪になる悪法は修正ではその問題点を解決できるものではなく、廃案しかありません。改めて私達は共謀罪は廃案しかないことを強く訴えます。
|